「腸」は、生物の進化の過程において初めて出来た基本の臓器です。
生物の歴史を遡ること約40億年前、海水中に腔腸動物という原始的な腸管だけの生物が出現しました。
クラゲや、イソギンチャクのような生き物です。
口とおしりの区別がなく、身体の中は管になっていて、管の内側には神経が張り巡らされており、異物の判断、食べ物の消化吸収などの指令を出していました。
この管が「腸」の始まりです。体内に取り入れるべきものと、そうでないものを選り分ける役割を持っています。
その腔腸動物から、私たち人間は進化して来ました。
腸内に張り巡らされた神経は脳の原型となっています。
腸は第二の脳と言われていますが、実は「第一の脳」が本当かも知れません。
その証拠に心の安定に欠かせないホルモン「セロトニン」は、今でもその大半が脳ではなく腸で造られています。
そして、腸管の周りには、浮遊微生物がたくさんいました。それが、腸内細菌のそもそもの始まりです。
腸内細菌は、宿主の食べたものから栄養をもらう代わりに、私たちの役に立つ物質に作り替えてくれるという共存共栄の関係があります。
細菌達は、腔腸動物の時代から、ずっと腸の働きを助けてくれている大切なパートナーなのです。
人間の腸の中には多種多様な微生物(腸内細菌)が住み着いており、重さにして何と1500gにもなります。
胎内にいる時には赤ちゃんの腸内は無菌状態ですが、お母さんの産道を通り抜ける際に初めて細菌をもらいます。
生まれてからは、赤ちゃんはハイハイしながら手あたり次第色々なものを口に入れますが、これは様々な有用細菌を取り入れているのです。
そして、さらに成長しながら多種多様な腸内細菌を獲得することによって、より強い体になっていきます。
コロナ禍で、昨今は除菌ばかりが推奨されていますが、何より大切な免疫力を下げることになっては元も子もありません。
私たちは、菌という目には見えない無数の存在と共に生きているのだという事を忘れないようにしたいものです。
「腸」は、人間の臓器の中で最も長い、始まりの臓器です。
心の安定も免疫力も「腸」を健康に保つ事が一番大切です。